北の大地で研修中 ニポラー日記
家庭医・総合医をめざして北海道の各地でニポラー(ニポポ研修医ニポポ研修OB)が活躍中です。 そのニポラー(研修医とOB医師)と指導医の日記です。楽しんでお読みください 。
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2010
12,02
13:07
青森紀行5
CATEGORY[未選択]
ここから三内丸山遺跡へ向かう。途中でこの計画が勇蛮であったことに気づく。坂道だしめちゃくちゃたいへんだったのだ。明らかにそれと分かる観光タクシーがひいひい言いながら橋を越え坂を上る私の自転車を追い越していく。私も当初イメージしていた「のんびりと田園を行く自転車」との相違を噛みしめながらも、このゆったり感がいいのさ、と負け惜しみをしつつ必死にペダルを漕いだ。
三内丸山の手前が青森県立美術館だった。白亜の瀟洒な建物。腹が減ったこともあって、まずはこちらにお邪魔することにした。
まずはミュージアムショップを覗く。私は博物館のミュージアムショップが大好きだ。こんなの誰が買うんだ?というようなへんな物品を見ているだけで楽しい。しかも土地のものや展示物と関係なく脈略もなく置かれているお土産を見ると思わず笑ってしまう。へんな美術館の楽しみ方だが。
ここは特記すべき所見なし。割かし普通のお土産が整然と並べらていた。まあ、ショップの意気込みは感じた。比較的新しい美術館なのでオシャレにまとめている印象。それはそれでいいけれど。笑いが欲しかった。
続いてランチを摂りに美術館に併設されたカフェ「四匹の猫」へ。少し涼しくて汗だくになったからだが冷めていく。木目が鮮やかで清涼感を感じる。展示にあった茄子と初雪茸のトマトソース、そして青森と言えば…シードルを注文。男の一人旅は昼間の酒にあり。自転車だし。自由なものだ。
太宰治の「津軽」には厚い人情を持った津軽の人々の姿が描かれているが、私が一番印象に残ったのは戦前の「リンゴ酒」であった。いろいろ調べてみるといわゆるシードルではなくて、発酵させる産物が減った時期に苦肉の策でリンゴを使用したというものらしい。しかし、その「リンゴ酒」という響きが私はたいへん気にいって、なんとか飲んでみることはできないかと思っていた。しかしまあ、今ならシードルか。ここで飲む。
要するにシャンパンみたいなもんだが、たいへんおいしかった。パスタはいまいちだった。少し値段が高い。
県立美術館へ。新鮮。白亜の巨大な建造物で不思議な展示物が多い。コンクリート壁が倒れていたり、浮いていたり。特別展のため人出も多く盛況だった。
特別展はスタジオジブリ・レイアウト展だった。映画やテレビアニメごとに原画やレイアウトが展示されている。いつか見た場面ばかりで、そのときの興奮が思い出された。たいへん精密に作られているし、またスピード感もスケールも大きくてジブリの偉大さが分かる展示だった。
宮崎監督はマイノリティーへの視点が優しいと感じる。私がジブリの最高傑作と思うのはやはり「もののけ姫」だが、その中のシシ神様などまつろわぬ民の魂のような存在だ。神殺し(侵略や新しい文化への帰依)の結果得られる文明に対する批判はナウシカ以来一貫しているように思う。したがって東北、こと三内丸山の隣でジブリ展を開くのは因縁を感じさせられた。
ところでこの美術館、常設展が素晴らしい。あまり統一感がないのが残念だけれど、各展示がそれぞれの主張をしている。
青森と言えば棟方志功だと思うが、この美術館にも棟方志功展示室があった。心で花を狩る「華狩領」(のちに志功の本を読むと、アイヌの花矢がモデルらしい)や季節を的確に表現した「大和し美し」などが印象に残ったが、全体としては丁寧さが目立って棟方志功らしい力強さに欠けたのは残念だった。その他は寺山修二のナンセンス、成田亨の怪獣、ウルトラマンなど郷土作家の展示や一番でっかい展示室にシャガールの「アレコ」などがあった。「アレコ」はファンタスティックなその絵に心打たれていたら案内のおばさんが
「
10
億円ですよ。」
と言って興ざめだった。まあ、そうでしょうねえ。
ある展示室でメゾチント作家、長谷川潔の「時、静物画」に出会った。これは京都国立近代美術館で見て以来、好きな作品で旧友にばったりと出くわしたような懐かしさと嬉しさを感じた。青森でもとても素敵な絵だった。(まだ続く)
[3回]
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